▶️比較するには期待される標準パフォーマンスが大事、企業価値にとってそれは資本コスト

なにか成果を図るときに、絶対額だけでなく、標準的に期待される基準値を考えることがある。標準を上回れば、「ある一定の成果」を上回わったと判断される。例えば通信簿で言えば、3です。3を上回れば、クラスがその学校の中で相対的に良い成績といえます。また、オリンピックにでるためには、オリンピック標準タイムを超えることが大事です。ゴルフではホールごとの規定打数です。ここでは分かり易く、ゴルフを例えにして資本コストを考えてみましょう。なお、余談ですが、経済学において標準的なパフォーマンスは「機会費用」という専門的な言葉で論じられます。より深く本質を理解したい方はぜひリンク先を読んでください。

▶️企業価値創造・事業・資本コスト=ゴルフ・ホール・規定打数(パー数)

資本コストは、ゴルフでいえば、各ホールには規定打数、「**パーの数」**のようなものです。ゴルフはホールごとに、長さなどでパーが3なのか、4なのか、5なのか決まっています。それは、ゴルフの設計者がプレイヤーに対して、プロとして標準的なカップインするまでの期待打数値といえます。打数だけでは判断できずパー数を比較してプレイヤーのうまさを測る重要な概念です。

投資家も、事業ごとに、理論的には、提供した資本に対してどの程度の標準的なキャッシュのリターンを得て欲しいか期待収益率があるはずです。リスク負担に見合った期待リターンに相当します。それは、黒字が赤字かという視点よりももっとハードルの高い視点です。企業の中のプロ、上場企業ならば、資本に見合ったリターンを得ているかどうか、という資本に注目した規定打席を考える必要があります。

▶️上場企業は企業の中のわずか0.1%のプロプレイヤー

日本企業は全部で2023年6月時点で368万社あります。そのうち上場企業は4000社未満です。

日本のゴルフ人口はスポーツ庁が3月24日に令和4年(2022年)度「スポーツ実施状況に関する世論調査」によると700万人強、うちティーチングプロとトーナメントプロの合計数は約5,500人のようです。企業数と上場企業数の比率と、ゴルファー人口のとプロゴルファーの人数を比較するとおおよそ0.1%と同じような割合なのは面白いですね。

▶️上場企業がWACC超のリターンを目指すのはプロゴルファーがアンダーを目指すのと同じ

ゴルフの規定打数は、プロ並みのうまさを図る指標です。上場企業はある意味、あまたある企業の中では、ゴルフのプロ選手みたいなものです。プロがパー数を下回る打数で回るをの目指すのが当たり前のように、上場企業も難易度の低い、黒字か赤字だけでなく、資本に対するリターンの実績がWACCを上回るかどうかを測る必要があるといえます。企業としてプロである、上場企業としての価値創造のうまさは、WACCを上回って初めて「うまいね」ということになるわけです。プロ選手がボギーやパーで満足しないのと同じです。

▶️継続的にWACCを上回ることができない場合は本来は未公開化して練習すべき

WACCを上回ること(72ホールでアンダー)がしんどくなったらいったんプロをやめて、トーナメントにでずに地道に練習するべき、つまりトーナメント(上場)はあきらめて未公開化して価値創造力に磨きをかけて再上場(再度プロ試験)を受けるべきでしょう。いつもオーバーパーのプロ選手はおそらくトーナメントにでることは恥ずかしいのではないでしょうか?

▶️ゴルフと企業価値を比較するとWACCの本質がわかる

以上、ゴルフが打数だけではうまさを判断できないとの同じように、パー数を比較してプレイヤーのうまさを図る重要な概念と、企業価値が単なる利益だけで価値創造のうまさが判断できないのと同じだということができます。

以上を表にまとめると以下のようになります。

ゴルフにおけるパー数=企業価値における資本コスト