執筆者:ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社 宮下修 https://j-phoenix-research.notion.site/7354_-_2023-11-23-3c692c1085994f5e8bcb56872a044c6e
PDF:7354_DirectMarketingMix_Analytical_Memo_2023_11_23.pdf
現状株価(11/17日時点)456円の3.9倍 (詳細はこちら)
通信インフラ業界を中心に営業活動のシステム化、蓄積されたデータ解析による効率的な営業などのDX化が急速に進んでいる。通信インフラ業界にとどまらず、公共・生活インフラ・Web/IT・通販/ECに営業DX化の動きは進展し、さらには、医療・金融・モビリティ・不動産 etcなど営業DX化が進む。そうした中で、営業DXのBPOという営業ソリューション分野において、人材育成、教育体制、データ蓄積とその解析による提案などで高付加価値の仕組化を築いた2007年創業のダイレクトマーケティングミックス(以下「DMM」)は、2018年12月期から2022年12月期の4年間で売上高が135億円から346億円と年率26%の成長、営業利益は16億円から57億円と年率37%で成長した。大手企業で進む営業DXのBPO領域でマーケットリーダーの地位を固めたといっても過言ではない。ところが、2023年12月期会社計画は一転して、売上高275億円前期比20%減、営業利益は20億円65%減と成長に大ブレーキがかかった。それは不幸にも三つのリスク(トリプルリスク)が顕在してしまったからだ。
**トリプルリスクの第一は、インバンドの低迷である。**営業ソリューションには、顧客からの問い合わせに対して対応する「インバウンド」と顧客へみずから営業アプローチしていく「アウトバウンド」がある。一見簡単に見えるインバウンドは、参入が相次ぎ価格競争が激しくなり、DMMが持つ高付加価値が一時的に評価されずらくなり、その結果、2023年12月期ではインバウンドの売り上げが低迷した。しかし、インバウンドについては、DMM社への取材によると、競合においては、コスト度外視で案件獲得しているケースが多数あるようであり、これらが撤退することで、DMMのインバウンド売り上げは底を打つとみられている。価格で選んだ業者が撤退することで、DMMの高付加価値が見直され、インバンドでの成長が復活しよう。第二のリスクは、最大手顧客のNTTグループの事業再編である。この再編により、一旦全体最適を図る見直しが進むことになり、外注を含むすべてのコスト見直しによって一時的にDMMのNTTグループ向けのアウトバンド売り上げが大きく削減される状況が生じた。しかし、再編が一段落し、今後はNTTグループ向けのアウトバンド需要が復活するので、アウトバンドも再び成長路線に戻ると推測される。第三のリスクは、会計問題である。不正問題が7月に発生した。一部顧客に対する請求を行う上で、不正なログインデータを作出していた。特別調査委員会が7月に設置され、原因特定に向けた調査や再発防止策の策定を行った。10月には報告がなされ、再発防止策が導入された。調査費用等による一時的なコスト増も大幅な減収、減益の一因となったといえる。このリスクも今後はネガティブになることはないと思われる。以上の三つの原因により、業績が大幅に悪化し、2022年10月に着けた最高値2,325円にくらべて、5分の1の水準にとどまっている。